point
2023年度もものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(以下、ものづくり補助金)の公募が開始され、2023年7月28日締切分の第15次から、今年度の公募が開始しました。
ものづくり補助金は令和2年の公募開始より通年で公募を行っている補助金で、主に中小企業の生産性向上につながるような新商品または新役務(サービス)の開発、商品の新生産方式の導入または役務の新提供方式の導入のための経費が補助対象となります。
ものづくり補助金は補助金額が最大で5,000万円、補助率が1/2または2/3と補助金額が高い制度であり注目されています。しかし、申請のための要件や手続きが複雑なため、初めて補助金を申請する事業者にとってはハードルの高い制度といえます。
ここではものづくり補助金に興味がある方向けに、制度の概要や採択されるためのポイントを解説します。
ものづくり補助金は、中小企業・小規模事業者等が取り組む革新的なサービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行い、生産性を向上させるための設備投資等を支援する補助金です。近いうちに大きな設備投資等を行う予定がある事業者は申請すべき制度といえます。制度の概要は以下のとおりです。
ものづくり補助金では基本要件として、以下を満たす3~5年の事業計画書を策定することが必要です。
給与支給総額を年率平均1.5%以上増加
従業員等に支給する給与支給総額が年間で平均1.5%以上向上する必要があります。これは一人当たりの給与ではなく、あくまでも総額となります。
事業場内最低賃金(補助事業を実施する事業場内で最も低い賃金)を、毎年、地域別最低賃金+30円以上の水準にする
設備投資等を行う事業場において、各従業員の時給換算した賃金を見た時に、地域別最低賃金と比較して+30円以上の水準に引き上げる必要があります。既にすべての従業員の賃金が地域別最低賃金と比較して+30円以上であれば、賃上げの必要はありません。
事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加
補助事業を行うことで付加価値額(営業利益+人件費+減価償却費)が年間で平均3%以上向上する必要があります。しっかりと事業計画を練ることで現実的に達成かつ要件を満たす収益プランを作成しましょう。
上記の基本要件のうち、給与支給総額と最低賃金については未達成の場合は補助金額の一部返還が発生するケースもあります。申請前に賃金を引き上げても財務上問題が無いかしっかりと検討を行う必要があります。さらに、各枠によっても細かい要件は異なります。詳細はこちらの公募要領または公募要領概要版をご確認するか、ぜひお問い合わせください。
ものづくり補助金の申請枠については以下の通りとなっています(公募要領概要版から抜粋)。これから行おうとする取組がどの枠に合致するのか検討した上で、申請準備に取り掛かるようにしましょう。通常枠以外の枠で申請できる場合、その枠で申請した方が支払われる補助金の条件は一般的に良くなります。
名称 | 概要 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|---|
通常枠 | 革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援。 | 750万円 ~1,250万円 |
1/2、 2/3(小規模・再生事業者) |
回復型賃上げ・雇用拡大枠 | 業況が厳しい事業者※が賃上げ・雇用拡大に取り組むための革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善に必要な設備・システム投資等を支援。 ※前年度の事業年度の課税所得がゼロである事業者に限る。 |
750万円 ~1,250万円 |
2/3 |
デジタル枠 | DXに資する革新的な製品・サービス開発又は生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援。 | 750万円 ~1,250万円 |
2/3 |
グリーン枠 | 温室効果ガスの排出削減に資する取組に応じ、革新的な製品・サービス開発又は炭素生産性向上を伴う生産プロセス・サービス提供方法の改善による生産性向上に必要な設備・システム投資等を支援。 |
エントリー: 750万円~1,250万円 スタンダード: 1,000万円~2,000万円 アドバンス: 2,000万円~4,000万円 |
2/3 |
グローバル市場開拓枠 | 海外事業の拡大等を目的とした設備投資等を支援。海外市場開拓(JAPANブランド)類型では、海外展開に係るブランディング・プロモーション等に係る経費も支援。 | 3,000万円 | 1/2、 2/3(小規模事業者) |
※大幅賃上げに係る補助上限額引上の特例
補助事業終了後、3~5年で大幅な賃上げに取り組む事業者に対し、上記枠の補助上限を100万円~1,000万円、更に上乗せ。(回復型賃上げ・雇用拡大枠などは除く)
最後に、採択される申請書を書き上げるためのポイント5つを説明します。
各種申請要件を満たすか確認する
既に説明しているとおり、ものづくり補助金では給与支給総額や付加価値額といった基本要件に加えて、申請する枠ごとにも個別の要件が設定されています。申請書を書き上げて申請を行っても、要件を満たさないとすべてが無駄になってしまうので、必ず事前に要件を満たすか確認をするようにしましょう。
すべての審査項目を確実に満たすこと
審査する項目については公募要領に記載されています。技術面・事業化面・政策面の観点で審査され、それぞれ詳しい内容も記載されています。申請書を書き始める前に審査項目を確認し、求められている項目をすべて申請書に記載するようにしましょう。
加点項目を活用する
ものづくり補助金では加点項目という制度があり、これを満たすことで審査が有利になります。こちらも審査項目同様に公募要領に記載されています。取得すれば必ず採択されるというわけではありませんが、可能な限り取得するようにしましょう。加点項目の例としては経営革新計画の承認を取得していること、パートナーシップ構築宣言を行っていること、等が挙げられます。
読みやすい申請書を作成する
補助金の審査については複数人の審査員が同じ申請書を査読し、点数付けをすることで評価されると言われています。一人の審査員が担当する審査件数は膨大なものになると予想されるため、一件に掛けられる時間は限られたものになります。そのため一度読んだだけで内容を理解できる申請書にするようにしましょう。具体的には、写真や図表も利用することでイメージを伝えやすくする、見出しや段落を装飾して見やすくする、短く簡潔で分かりやすい日本語で文章を書く、等が効果的です。
専門家の力を借りる
補助金制度は非常に複雑で、事業者自身ですべてを調べ上げて申請書の作成を行うのは多大な労力を要します。さらに、採択された後にも交付申請、実績報告といった手続きを踏む必要がありここで手続きに問題があると、最悪補助金が貰えなくなってしまうといったケースも発生します。そのため可能であれば補助金専門コンサルタント、金融機関、商工会議所などに相談をしてみることをおすすめします。当社であれば申請作業はもちろん、申請後の事業実施まで伴走支援いたします。ぜひ一度お問い合わせください。
これまでお伝えした通り、ものづくり補助金を有効に活用するためには、以下の点を注意深く考慮する必要があります。
これらの点に注意しつつ事業計画を策定し、必要であれば専門家の力も借りるようにしていきましょう。そして補助金が採択されたら事業のさらなる拡大を目指しましょう!